Overseas Theological School News

神学校紹介(2) ダラム大学神学宗教学部、ゴードンウェル神学校

更新日:2022.08.03

富田雄治

ダラム大学神学宗教学部

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イングランドの大学というとOxfordとCambridgeが圧倒的な知名度を誇りますから、日本ではダラム大学はあまり知られていないように思います。それでもイングランドで三番目に古い大学として建てられたこの大学の学部の幾つかは、イギリス国内のランキングのトップ5に名を連ねています。ダラム主教座を有する地にあるということもあって、神学宗教学部も看板学部の一つです。学部の建物は大聖堂のすぐ隣にあります。この学部で最も評価が高いのは新約聖書学です。19世紀にダラム司教であったJ. B. Lightfootの名前を冠した新約学の講座があり、現在はJohn Barclay教授が務めています。Paul and the Giftという優れたパウロ研究を最近公にされた方です。教父学ではアウグスティヌスなどの研究で知られるLewis Ayers教授が著名ではないでしょうか。ビザンティン研究の分野はAndrew Louth教授が引退された後、Krastsu Banev准教授が引き継いでいます。

ダラム大学はOxfordやCambridgeのような学寮制を採用しています。留学生の大半はUstinov Collegeに回されるようです。このカレッジは、他のカレッジほど、全体での食事会などは多くありませんでしたが、チューター(tutor)の方がよく夕食に招待してくださったり、家族向けのイベントを企画してくださったりしました。スコットランド出身の先生が学寮長であった時には、スコットランドの国民的詩人Robert Burns を記念するBurns Nightにハギスの夕食会が開催されたりもしました。学部を超えた横の繋がりをもつことができるのもダラム大学の魅力の一つだと思います。

イングランドで学位を目指す場合、大学の文化や習慣に慣れるという意味では、最初からイングランドで修士を修め、そこから博士課程を目指す方が望ましいと感じます。ICUからダラムの哲学部で学んでいた方がおられましたが、この方は、最初にOxfordのディプロマ(学部に一年編入するコース)と修士課程を終えてから、ダラムに来られていたと思います。

要求されるIELTSやTOEFLなどのスコアについてですが、ダラム大学の留学生向けのホームページには、評価の基準は明記されていないようです。博士課程の場合は8.0程度あれば十分ではないかと思います。ただイングランドの大学院の博士課程に行くために、一番重要なことは、指導教官となる方が、自分の研究テーマについて関心を持ってくれるかどうかであると思います。イングランドでは、指導教官の権限が非常に強く、志願者個人の成績や英語能力証明などは、それほど明確な基準があるわけではないようです。教授が取りたいと思う学生を取ることができるようになっているのだと思います。それだけに、博士課程を修了するために、重要なことは、いうまでもなく研究で成果を上げることではありますが、同時に指導教官との良好な関係を維持することも大切だと言われます。

ダラム大学の難点は、大学図書館の蔵書が、残念ながらあまり充実していないことです。必要な著作の多くはInter Library Loanを使って入手する必要があります。また紹介状を携えてCambridge大学の図書館などを数日間利用したりすることもできます。

(この情報は主に2005-2009年の留学時の経験に基づいて書きました。)

 

ゴードン・コンウェル神学校

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ゴードン・コンウェル神学校は、1969年に、米国福音派の指導者であったビリー・グラハムとハロルド・ジョン・オッカンゲーが中心となって発足した神学校です。それ以前にあったゴードン神学校とコンウェル神学校とが合同して設立された神学校でもありました。オッカンゲーという方は、ボストンの中心部にあるパークストリート会衆派教会の牧師であった人物で、フラー神学校の創立者の一人でもありました。場所はマサチューセッツ州ボストン郊外のサウス・ハミルトンにあります。かつてはカトリックの修道院であった場所を利用していて、周囲には富裕層の住宅地が並び、キャンパス内を近隣の方が乗馬のコースとして通過していかれることもよくありました。

福音派の神学校にしては珍しく女性教職を認める立場の神学校であるので、教師陣に女性も多く、また人種的多様性にも配慮している神学校だと思います。

ゴードン・コンウェル神学校の強みは聖書学・聖書語学のコースが充実していることです。日本語にも翻訳されているG. D. Feeの『新約聖書の釈義』とD. Stuartの『旧約聖書の釈義』は、いずれもかつてゴードン・コンウェルの教授であった二人が教科書として書いたものです。新約修士のコースでは、ギリシャ語の履修を終えた後、必ず「新約聖書の解釈」(Interpreting the New Testament)というコースを受講します。Feeの『新約聖書の釈義』は、このクラスの教科書として執筆されたものでした。このクラスでは、新約釈義の方法に関わる諸分野(語彙研究、構造分析、本文批評、様式批評、編集批評、文芸批評など)が網羅されています。日本で神学校を卒業してからゴードン・コンウェルに行く場合、ギリシャ語とヘブライ語のクラスは、夏の集中コースで履修すると、良い復習の機会となります。(筆者が2003-05年に新約学を学んだ時のアドヴァイザーとしてお世話になったのはSean McDonough教授でした。Richard Bauckhamのもとで黙示録研究をされた方です)

教会史の修士コースは、以前は専任教員がいなかった教父学の分野をDonald Fairbairnという先生が教えるようになっているようです。教会史コースの必須科目にHistoriographyというクラスがあります。このクラスでは研究に役立つ基礎的で重要な事柄を学ぶことができます。(筆者が1996-98年に教会史を学んだ時のアドヴァイザーはGwenfair Adams教授でした。CambridgeのEman Duffyの指導で、中世の霊性や神秘主義の研究をされた方です)

ゴードン・コンウェル神学校は、Boston Theological Instituteというボストン地域の神学校・神学部間の単位互換制度に参加しており、例えばハーバード大学の神学部で提供されているコースを履修することも可能です。ただゴードン・コンウェルのキャンパスはボストンからはかなり離れているので、この制度を利用するには少し不便ではありました。

入学の要件はWebサイトに明記されています。他のアメリカの大学・神学校でも同じだと思いますが、すでに英語でクラスを履修することができる方は、インターネットで提供されているコースを先に履修して、留学期間を短期間で済ませることもできます。

以前は留学生をサポートする体制が非常に充実していて、Student Life Serviceというセクションの方に病院の紹介をしてもらったりもしました。初めて留学する場所としては、とても恵まれた良い神学校だと思います。

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